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BUSINESS

<2022年10⽉を振り返って>⼭内英貴

 10月の前半は上下に大きく振幅した株式市場でしたが、米国の金融引締めペースが減速する兆候がみえてくるのではないかとの期待が台頭した後半になると株式市場は反発しました。また、本稿執筆時点(11月10日)発表の米国CPIも利上げペースダウンを期待させる弱い結果だったことから、金利上昇・株安・ドル高の流れに大幅な調整が入っています。
 今年に入ってからの動きを振り返ってみると、大きく下げた翌月には買戻しが入るものの、また次の月には下値を割り込んで下落するというように、月単位でドッタンバッタンを続けながらダラダラと下げる動きが続いていますが、この足許の動きが米国経済の軟着陸につながるものなのかどうか注目されます。
 主要中銀の金融政策は、利下げペースが減速に向かうとの期待がくすぶりますが、利上げによる最終到達金利(ターミナル・レート)はまだ高止まっています。物価上昇も水準としてはまだまだ高水準で、ひとたび点火してしまったインフレの鎮静化が容易ではないことがみてとれるため、これからも新しい材料に市場が反応しやすい状況が続くのではないかと思います。

 市場のセンチメントとしては、好材料を探して底値を拾いたいという願望が根底にあるのでしょうが、リーマンショックやコロナショックのようなマクロ・イベントではなく、多くの市場参加者が経験したことのない物価と金利の持続的上昇という実態経済の構造変化に対する対応には思いのほか時間がかかり、調整も長く深くなる可能性は軽視できないと考えています。また、当月には中国で習近平政権が異例の3期目入りとなり、米中関係硬化とゼロ・コロナ政策が中国経済、ひいてはグローバル経済に長期的に影響を与えそうです。インフレ・気候変動・冷戦・格差拡大・サプライチェーンの寸断などなど、地球規模の大きな問題に対する解決や協調は容易でなく、市場の重しとなるような材料には枚挙に暇がありません。

 このようにボラティリティが高止まりした長期調整局面で長期投資家に求められるのは、市場から退出させられないようにリスク管理をしっかり行い、ポートフォリオのドローダウンをできるだけ抑制してトンネルの出口を待つという姿勢と忍耐です。

 グローバル経済が長期的に成長を続ける限り、資産価格はいずれどこかで底打ちし、忍耐強い投資家にリターンをもたらすことになります。GCIエンダウメントファンドは、株価の底打ちの水準やタイミングなど、市場の先行きを予想して当て続けることは不可能であるとの考え方に基づき、伝統資産にとどまらずに、オルタナティブへの配分を含めたリスク分散を可能な限り行う設計となっています。引き続き「慎重なる楽観」という姿勢を崩さず、受益者のみなさまとともに、所定のリスクを取り続け、長期的なリターンの積上げを目指してまいります。