運用責任者インタビュー(想い)

INTERVIEW運用責任者インタビュー(想い)

PROFILE 山内 英貴

1963年生まれ、栃木県鹿沼市出身。東京大学経済学部卒業。新卒で日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行し、債券や為替のトレーディング業務を行う。シンガポール駐在時に金融危機を経験し、リスク管理のノウハウと当時最先端であったITの技術を融合させた運用ができないかと考え2000年にGCIアセットマネジメントを設立。2015年に設定したGCIエンダウメントファンドは数々の賞も受賞

山内 英貴

運用の基本スタンス

「GCI エンダウメントファンド(以下当ファンドといいます)」は、さまざまな市場環境を乗り越えて、長期間にわたるすばらしい運用実績を残してきたエンダウメント(大学財団)型の投資戦略をお手本に、オルタナティブ投資を積極的に活用したグローバル分散投資を行います。リスクとリターンの源泉を分散・多様化するとともに、運用コストにも注意を払い、運用資産の長期的成長を効率的に目指します。

当ファンドの運用手法はシンプルかつ頑健(Robust)です。原則として年一回、基本資産配分(ターゲット・ポートフォリオ)を決定した上で、適宜リバランスを実行し、資産配分を維持します。

基本資産配分(ターゲット・ポートフォリオ)は、想定リスクを成長型で年率 8%、安定型で年率 5%にセットし、対象資産の流動性やキャパシティ(市場規模)などを吟味して選択した投資対象ユニバースの中で、最良の期待リターンとなるように配分比率を決定します。その時々の市場動向やムードなどに過度に振り回されず、取引コストを抑制しながら、一定のリスクを効率的に取り続けるという、ブレのない運用姿勢を貫きます。

長期資産形成において、もっとも重要なのは「継続」です。ときによって、うまくいくことも、そうでないときもありますが、途中で止めてしまう(その多くは損切りしてしまう)ことを避けるべく、「分散」効果を活用したリスク管理を重視します。

ビッグ・ピクチャーと基本資産配分

2023年9月、当ファンドは年に一度の基本資産配分の点検に合わせて、その前提となるビッグ・ピクチャー(10年程度の時間軸でマクロ環境を俯瞰した投資環境の認識)の見直しを行いました。

当ファンドが運用を開始したのは2015年9月ですが、そこからさらに15年遡る2000年4月の当社設立以来、①グローバル化、②経済の市場化、③情報通信革命(IT化)という20世紀末に生じた3つの大きなトレンドが、経済成長の力強いエンジンになると同時に、ディスインフレ圧力となって低インフレ・低金利時代が長期化するというビッグ・ピクチャーを堅持してきました。そして、コロナ禍と地政学リスクの顕在化がきっかけとなり、1980年代以降長く続いてきた世界的なディスインフレと金利低下トレンドには終止符が打たれました。

数十年単位の長期スパンでみると、第二次世界大戦時の戦費調達のため米国などで実施された財政ファイナンス(大量の国債を中央銀行が買い入れる措置)とその後の石油危機により、1940年から1980年まで40年間のインフレの時代がありました。その後、1980年以降40年間はグローバル化を背景にしたディスインフレ時代が続きましたが、それを政策的に後押ししたリーマン危機後の未曾有の量的金融緩和と財政拡張が、コロナ禍と地政学リスクの顕在化(ロシアによるウクライナ侵攻と米中対立)を契機に大きな転機を迎えたものと考えています。グローバル化は、平和の配当を通じて経済成長という恩恵をもたらした一方、格差拡大や内向き志向などの副作用も顕在化しました。

しかしながら、人類の自由への希求と技術革新が停滞するとは考えにくく、グローバル化という太く大きな潮流自体は不変だと考えます。デジタル化(DX)や脱炭素などを強力なドライバーとして、紆余曲折を経ながらもグローバル経済は成長を続けていくことが期待されます。一方、低インフレを背景に主要国が続けてきた緩和的な財政金融政策がとうとう行き着くところまで行き、反転したことはおそらく間違いなく、ディスインフレが終わってインフレ的な環境に移行したものと思われます。

資産運用という観点では、主要国の歴史的金融緩和政策を受けて債券高・株高が続いたことから、シンプルなパッシブ運用が良好なパフォーマンスを上げました。為替市場でドル高円安が大きく進んだことから、日本の円建て投資家にとっては為替をオープンにすることで、ヘッジコストを避けるだけでなく、為替差益を享受することも可能でした。結果的に、円建ての期待リスクを最優先に管理し、そのうえでリターンの極大化を目指していく当ファンドにとっては相対的に逆風の環境でした。しかしながら、今後は市場ボラティリティが高まり、運用環境も変化するのではないかと考えています。そのような不確実性の高い環境では、「分散」とそれに基づくリスク管理が最善の対応のひとつと考えています。
米国大学エンダウメント型のポートフォリオをお手本とする当ファンドの特徴はオルタナティブの活用です。とくに、ショート・ポジション(売りから入る)をとることも可能なヘッジファンドを利用することで、効果的な分散効果と安定したリターンを得ることができると考えています。

当ファンドは、市場環境にかかわらず、円建ての変動リスクを想定の範囲内に抑制することに努め、資産価値の保全を最優先しながら、人類とグローバル経済の成長をリターンの源泉として、長期的な成長を目指してまいります。受益者のみなさまにおかれましても、こうした投資哲学・運用に対するブレない姿勢をご理解いただき、腰を据えた長期資産運用・資産形成にご一緒にお取り組みくださいますよう、お願い申し上げます。