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BUSINESS

<2021年9⽉を振り返って>⼭内英貴

 過去にも9月・10月は、不思議と市場が大きく荒れることが少なくありませんでした。1998年のLTCM破綻や2008年のリーマン危機も9月末でした。今年は、コロナ禍からの経済回復と背中合わせでインフレ懸念
が台頭したこと、中国経済の先行き不安を連想させるニュースが出てきたことから、株式・債券市場が比較的大きく動いています。

 未曾有の量的緩和を続けてきた金融政策の転換は、いうまでもなく市場環境に大きな影響を与えます。市場は、中央銀行による市場フレンドリーな政策対応に慣れきっている感も否定できず、この帰趨が中長期的な
トレンドを決定づけることになるでしょう。中央銀行が事態を十分コントロールできる範囲内であれば、‘金融政策の正常化’と位置付けることができ、市場も落ち着いた反応になると思われますが、物価動向が政策姿
勢を凌駕してしまうと‘ビハインド・ザ・カーブ’つまり、中央銀行が後手後手に回ることになり、波乱が懸念されます。


 2つ目の大きな材料は中国からのニュースです。政権による堅固な規制と管理の下にあることから、大きな問題にはならないとの楽観的な観測も根強いのですが、かつて日本の大蔵省による護送船団行政が金融不安
を回避できなかったように、前述の中央銀行同様のリスクは存在し、なおかつ中国の潜在リスクをまだ市場は織り込んでいないように思われます。


 3つ目の材料としては、グローバル化と軌を一にしてきた経済成長志向から、格差是正という冨の分配に主要国の政策が同時にシフトしつつあることです。株式市場は経済成長の恩恵を最も享受できる資産クラスで
すが、成長から分配へと政策の優先順位が変わると、そこが減速する可能性があります。


 ビッグ・ピクチャーを前提に、上記の観点も踏まえて、9月は年1回の基本資産配分の点検を行い、これまでの配分比率を大きく変更はせず、微調整に留めることとしました。ファンドのリスク水準が概ね想定通り
であり、リスクを高める状況にはないことが背景です。


 内容としては、先進国債券(米国)の比率を引き下げ、海外債券(グローバル除く米ドル建て)に振り向けました。これは、金融政策正常化のプロセスで米国が先行し、米国債にとっても逆風となると考えるからで
す。


 引き続き「慎重なる楽観」という姿勢で、受益者のみなさまとともに、整斉と所定のリスクを取り続け、長期的なリターンの積上げを目指してまいります。