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<2022年8⽉を振り返って>⼭内英貴

 主要国の中央銀行関係者が一堂に会するジャクソン・ホール会合で、パウエルFRB議長がインフレ退治を最優先する強い決意を示したことから、7月以降の楽観ムードが吹き飛び、債券・株式ともに調整が続いています。同時に、為替市場でのドル高が進行し、なかでも主要国の中で唯一、日銀が金融緩和政策を堅持する円に売り圧力が戻り、1998年以来のドル円高値(円安値)をうかがう展開となっています。


 当時、私は前職(旧日本興業銀行)でシンガポールに駐在し、ディーリングルームで市場関連の仕事をしていましたが、その頃のことは鮮明に覚えています。


 前年のアジア通貨危機が世界に波及し、ロシアの債務不履行などにつながる中、米国の金融引締めと強いドル政策によるドル高が進み、グローバル経済にさまざまな歪みをもたらしていました。一方、日本はバブル崩壊の最終局面にあり、大手金融機関が立て続けに破綻し、金融システム不安から「日本売り」の様相を呈していました。円高不況からの脱却を望んでいた当局も140円を超える急速な円安に歯止めをかけるため、プラザ合意以来の円買い介入を実施したものの、焼け石に水だったのですが、ドルへの資本集中の流れを一変させたのは他ならぬ米国市場自体のリスクオフでした。大手ヘッジファンドLTCM破綻を契機に米国を中心とするグローバル金融市場でのシステミックリスクが顕在化し、一気にリスク回避が進みました。大手銀行や大手証券が破綻する日本の金融危機の真っただ中で、ドル円は一日で20円近く暴落するなど、147円台の高値から2か月も経ずに110円付近まで下落したのです。


 当時と現在では事情が違う点も多々指摘できますが、政策の捻じれが市場変動をもたらしている主因である点は共通だと思います。


 急速な円安が進行した8月も、為替ヘッジが2%近くポートフォリオの足を引っ張ってしまったのですが、GCIエンダウメントファンドは円建てでのリスク・リターンを最大化することを目指していますので、やむを得ないコストであり、1998年のような展開が繰り返されるか否かは神のみぞ知るではありますが、運用戦略の根幹は堅持してまいります。


 市場を動かす要因が、欧州・アジアの地政学的材料からグローバルなインフレ懸念、そして中央銀行の政策変更に至るまで多岐にわたっており、FRBすら先行きのガイダンス(見通し)の提示を行わないことにするほど一段と不透明な状況ですので、今後もボラティリティの高い環境は続くと考えますが、オルタナティブがその安定化を担うことになります。

 一方、グローバル経済が長期的に成長する限り、資産価格はどこかで底打ちし、忍耐強い投資家にリターンをもたらすことになります。GCIエンダウメントファンドは、市場の先行きを予想して当て続けることは不可能であるとの考え方に基づき、オルタナティブへの配分を含めたリスク分散を可能な限り行う設計となっています。引き続き「慎重なる楽観」という姿勢を崩さず、受益者のみなさまとともに、所定のリスクを取り続け、長期的なリターンの積上げを目指してまいります。