資産運用を
コラム学ぼう!
Let's learn by column

BUSINESS

<2021年4⽉を振り返って>⼭内英貴

 遅々としてワクチン接種が進まない日本を尻目に、米国をはじめとする一部の国々では経済活動の再開が本格化してきました。しかしながら、逆にそれが引き金となってインフレ懸念が高まり、長期金利の上昇と資産価格の調整により、マーケットは荒っぽい動きとなっています。


 いまの状況は、夏の高校野球県予選に似ていると思っています。トーナメント方式で甲子園を目指す最後の夏は敗戦が許されませんので、今日いま目の前にある一試合に全力を傾注して勝ち抜かねばなりません。まさに「今日なくして明日はない」ので、次の試合を心配してエースを温存するわけにはいかないのです。いま世界はまさに同じ状況で、インフレとかバブルとか将来の心配の種がいろいろあったとしても、「コロナ禍の克服なしに明日はない」という姿勢で、史上類をみないような政策運営がなされています。


 2008年のリーマン危機は金融システムの問題でしたので、金融業界に対して安易に救いの手を差し伸べることには、副作用の懸念も含めて強い反対がありました。しかし、新型コロナウイルスとの闘いは人類共通ですから、あらゆる政策手段を総動員することに異を唱える人はなかなかでてきません。


 市場参加者も、金利が消失した投資環境のなかで、金融財政政策をよりどころについていかざるを得ない状況にあります。


 このようにして高騰してきた資産価格と、低迷する実態経済の乖離が懸念されてきましたが、先月述べたように、むしろコロナショックが契機となって、私たちの働き方・暮らし方が大きく変わり、それに沿ったイノベーションがグローバル経済の原動力になっていくのかもしれません。また、我慢の続く家計には、政府財政悪化と引き換えに潤沢な購買力が蓄えられており、それが解放された場合にはむしろ景気が思いのほか回復していくポジティブサプライズの可能性もありそうです。


 いくらでも挙げることができる潜在リスクの中で、以下は仮に顕在化すると影響が大きいと思われるため、留意しています。


①インフレ懸念の増長が速く、政策当局がコントロールできずに後追いになってしまう場合、中央銀行と市場の見方を上回る速度で長期金利が上昇し、リスク資産価格が大きく調整する可能性があります。
② 台湾海峡の緊張や、ミャンマー・中央アジアなどでの「代理戦争」など、地政学リスクは市場価格に織り込まれているとは思えません。予想が難しく、市場への影響を測りかねるだけに、ひとたび顕在化すると衝撃が大きくなる可能性があります。
③ 中国国内の不動産市場や金融システムの問題も未知のものです。日本のかつての護送船団方式を想起させるような政府によるグリップが根拠の薄い安心感をもたらすことに加えて、その結果、なかなか情報が出てこず、蓋を開けて中を見ることができないため、マーケットはあえて軽視(タブー視)しているような側面があると感じています。


こうしたリスクを念頭に置きながらも、予想し難い短期的市場変動に振り回されず、グローバルな構造改革とそれに伴う成長からのリターンをじっくりと積上げていきましょう。引き続き「慎重なる楽観」という姿勢で、受益者のみなさまとともに、整斉と所定のリスクを取り続けてまいります。