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BUSINESS

<2021年1⽉を振り返って>⼭内英貴

 2021年に入っても株式市場は堅調です。今号では、少々話のネタ的ではありますが、長期運用をご一緒いただいている投資家のみなさまに、今後の見通しに関するひとつの切り口として、「グッド・ニュース&バッド・ニュース」をご紹介したいと思います。

 「狂騒の20年代(Roaring 20’s)」という言葉をご存知でしょうか。
“終息までほぼ3年近くを要した世界的感染病は社会経済活動と人々の心に大きな禍根を残した。しかし、ひとたびウイルスとの闘いに勝利すると、窮屈で忍耐を強いられた時間が長かった分、その反動も大きかった。経済活動は予期せぬ急回復をみせただけでなく、人々に蓄積されたエネルギーが開放された結果、100年単位の技術革新や経済レジームの変革がもたらされて株式市場は大きく上昇した。”

 この話は、20年代といってもいまからちょうど100年前、1920年代の話です。

 長く凄惨な第一次世界大戦が1918年に終わる頃、スペイン風邪が大流行して戦争をはるかに上回る犠牲者が出た欧米諸国では、辛く重苦しい日常が続いていたことは想像に難くありません。ところが、米国だけで6,000万人ともいわれる死者を出した感染症が1921年に終息すると、ハーディング新大統領が「Normality(常態に戻る)」を掲げて就任し、まるでトンネルを抜けたかのように、人生を前向きに楽しもうというきわめて明るい時代が訪れたそうです。自動車・ラジオ・映画などの新技術が急速に普及し、大量生産・大量消費時代の幕が開いたのがこの頃でした。

 歴史は繰り返すといいますが、この100年前の話になにか既視感を覚える方もいらっしゃるのではないでしょうか。人類共通の敵ウイルスとの闘い、それを支える各国共通の経済政策を簡単に転換することもなさそうだとすると、懸念される金融市場と実態経済の乖離は市場の先見性によるものという見方も可能かもしれません。

 一方、バッド・ニュースは、ちょうど100年前にこうして10年間近く続いた株式市場の強気相場は「世界恐慌」という形で唐突に終わり、世界は第二次世界大戦に転げ落ちていきました。

 現下の金融財政政策がもたらす超低金利と株高は、その政策を継続できる限り、そしてその限界を市場が心配し始めない限り、思いのほか続くのかもしれません。しかし、それがバブルなのか、バブルだとしたらいつ何を契機に弾けるのか、予め予測することは不可能です。

 「慎重なる楽観」という姿勢で、受益者のみなさまとともに、整斉と所定のリスクを取り続けてまいります。一喜一憂せず、腰を据えて運用を続けてまいりましょう。