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BUSINESS

<2020年11⽉を振り返って>⼭内英貴

 つい数か月前、街中を行き交う人々がみなマスクを着けている光景は異様でしたが、最近ではその中に一人
だけマスクを着けていない人がいると強い違和感を覚えるようになったのは私だけではないと思います。生
活様式も働き方も、だいぶウイズコロナに慣れてきたのでしょうか。と同時に、わたしたちは、どうも、こ
の新型コロナウイルスは過去の幾多の疫病とは異なり、時間の経過とともに自然に終息していくものではな
さそうだと気づき始めているようにも思います。しかしながら、それは必ずしもバッドニュースでもなく
て、そうした不都合な現実を前提としながら、今後の活路をどう切り拓いていくか、人類はどうこの苦境を
乗り越えていくか、に市場の関心が向けられているようにも思います。
 加えて、ワクチンの早期開発は、市場にとってはポジティブ・サプライズ、上振れ要因となります。

 月初めに米国大統領選挙という大きなマクロ・イベントを通過した11月は、上述の前向きな描写を地でい
くような展開となり、株式を筆頭にほぼすべての資産価格が上昇しました。選挙と感染拡大の影響を懸念
し、実態経済と市場との乖離を心配して上昇相場に乗り遅れた市場参加者の多くが、潤沢な待機資金を背景
に参戦せざるを得なかった、というのが実情だと思われます。

 ビッグ・ピクチャーでも書いていますが、こうした強気相場は多くの市場参加者にとってありがたいもの
の、コインの裏表のように潜在的なリスクが拡大している可能性もありますので、「慎重なる楽観」という
姿勢で淡々とついていくのが妥当ではないでしょうか。コロナショック後、市場が理屈と経験則では測れな
い未知の領域に入っている以上、将来を的確に見通してうまく立ち回ることはいよいよ困難ですし、かとい
って丸腰でついていくのも無防備すぎます。危機は常に予想もしなかった形で、予想外の方角から到来する
ものですが、2021年に向けて敢えて申し上げるとすれば、1500兆円(15兆USドル)という途方もない規
模に膨張した中国国内債券市場で、国営企業(SOE)発行債券の債務不履行が急増していることは新しい材
料として注目しています。

 最後に、いつも繰り返しになりますが、長期投資の観点から、また現下の環境ではなおさらのこと、ダウン
サイドにも一定の備えを持った所定のポートフォリオを維持し、予想外の動きにも動じない腰の据わった運
用を継続していく覚悟がなによりも重要です。