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<2025年9月:ビッグ・ピクチャーを更新しました。>

 2025年9月、当ファンドは運用開始から10年を迎えました。この間、当ファンドの運用哲学と理念にご理解いただき、ご一緒くださってきた受益者のみなさま、ご関係のみなさまにはこの場を借りて厚く御礼申し上げます。10年という節目に当たって、運用の総括は改めてご報告させていただきます。
 年に一度の基本資産配分の点検に合わせて、例年、その前提となるビッグ・ピクチャー(10年程度の時間軸でマクロ環境を俯瞰した投資環境の認識)の定期的な点検を行っています。今回はこれまでの経緯を振り返った上で、整理したいと思いますが、基本的な見方自体は昨年から変更ありません。

■ディスインフレの終焉とインフレ環境への転換
 当ファンドが運用を開始したのは2015年9月ですが、そこからさらに15年遡る2000年4月の当社設立以来、①グローバル化、②経済の市場化、③情報通信革命(IT化)という20世紀末に生じた3つの大きなトレンドが、経済成長の力強いエンジンになると同時に、ディスインフレ圧力となって低インフレ・低金利時代が長期化するというビッグ・ピクチャーを堅持してきました。そして、コロナ禍と地政学リスクの顕在化がきっかけとなり、1980年代以降長く続いてきた世界的なディスインフレと金利低下トレンドには終止符が打たれました。
 数十年単位の長期スパンでみると、第二次世界大戦時の戦費調達のため米国などで実施された財政ファイナンス(大量の国債を中央銀行が買い入れる措置)とその後の石油危機により、1940年から1980年まで40年間のインフレの時代がありました。その後、1980年以降40年間はグローバル化を背景にしたディスインフレ時代が続きましたが、それを政策的に後押ししたリーマン危機後の未曾有の量的金融緩和と財政拡張が、コロナ禍と地政学リスクの顕在化(ロシアによるウクライナ侵攻と米中対立)を契機に大きな転機を迎えました。

■グローバル化の長期トレンドそのものは健在
 グローバル化は、平和の配当を通じて経済成長という恩恵をもたらした一方、格差拡大や内向き志向などの副作用も顕在化しました。しかしながら、人類の自由への希求と技術革新が停滞するとは考えにくく、グローバル化という太く大きな潮流自体は不変だと考えます。デジタル化(DX)や脱炭素などを強力なドライバーとして、紆余曲折を経ながらもグローバル経済は成長を続けていくことが期待されます。一方、低インフレを背景に主要国が続けてきた緩和的な財政金融政策がとうとう行き着くところまで行き、反転したことはおそらく間違いなく、ディスインフレが終わってインフレ的な環境に移行したものと思われます。

■資産配分はインフレ・ヘッジを念頭に置く必要
 米国を筆頭に、中央銀行の独立性が問われるような状況も日常化しており、拡張的な財政金融政策にバイアスがかかりやすい環境が続き、それが結果的には市場の見方を上回るインフレ圧力につながりやすいと考えています。資産運用という観点では、インフレ環境に脆弱な債券は実質リターンを獲得しにくいため、底堅い名目経済成長を前提に、株式を筆頭とするインフレ・ヘッジの可能な資産クラスを厚めにする必要があると考えています。
 また、為替市場ではドル高円安が大きく進み、購買力平価など伝統的な理屈では説明がつきにくい状況も長期化しています。日本の円建て投資家にとっては為替をオープンにすることで、ヘッジコストを避けるだけでなく、為替差益を享受することも可能でした。結果的に、円建ての期待リスクを最優先に管理し、そのうえでリターンの極大化を目指していく当ファンドにとっては相対的に逆風の環境となっています。購買力平価など伝統的な理屈では説明の難しい円安が続いており、どこかで調整が入る可能性は依然として否定できませんが、2025年9月の自民党新総裁誕生がアベノミクス的な経済政策を志向するものになる可能性があること、ドル高というよりは円安であること、この水準からさらに円安が進まなくとも、同水準にとどまることはヘッジコストを勘案すると円安トレンド継続ともいえることから、為替ヘッジについてはこれまでと比較して機動的に対応してまいります。

■引き続き、分散に基づくリスク管理を徹底する運用哲学を堅持
 どのような市場環境にあっても、長期投資において、「分散」とそれに基づくリスク管理は最善の対応のひとつと考えています。そして、米国大学エンダウメント型のポートフォリオをお手本とする当ファンドの特徴はオルタナティブの活用です。とくに、ショート・ポジション(売りから入る)をとることも可能なヘッジファンドを利用することで、効果的な分散効果と安定したリターンを得ることができると考えています。
 当ファンドは、市場環境にかかわらず、円建ての変動リスクを想定の範囲内に抑制することに努め、資産価値の保全を最優先しながら、人類とグローバル経済の成長をリターンの源泉として、長期的な成長を目指してまいります。受益者のみなさまにおかれましても、こうした投資哲学・運用に対するブレない姿勢をご理解いただき、腰を据えた長期資産運用・資産形成にご一緒にお取り組みくださいますよう、お願い申し上げます。