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<2025年5月を振り返って>山内英貴

 5月のグローバル株式市場は、前月の急落前の水準をおおむね取り戻し、6月に入っても比較的静穏な動きとなっています。関税問題というあれほど大騒ぎしたリスクが解消したわけでは全くないにもかかわらず、市場も頭を冷やして、落ち着きを取り戻しつつあるというところでしょうか。4月の株価急落に対する対応は、昨年8月と同様に、長期資産運用に取り組む投資家の基本姿勢を試す結果となりました。
 米国や日本など主要国の実体経済は意外と強いという印象で、企業業績が株式市場をサポートしていますが、今後の潜在リスク・テールリスクと私が意識しているのは、トランプ政権内の動向と国債市場です。
 前者は、トランプ大統領とイーロン・マスク氏の確執が表面化しましたが、いまや市場が信頼を寄せる存在となったスコット・ベッセント財務長官が今後の米国経済政策運営に果たす役割です。まあ、いきなり大喧嘩というようなことにはならない人物だとは考えていますが、短期的なボラティリティを誘発するテールリスクとしては無視できません。
 後者は、長期的にとても重要な話ですが、日本の長期国債の利回り上昇です。ここ十年来、日本国債市場は日本銀行による量的緩和政策により首根っこをつかまれて無風状態でしたが、日銀の金融政策正常化の動きとともにボラティリティが出てきました。グローバルに見渡しても、日本の実質金利のマイナス幅は突出しており、為替相場に与える影響も大ですが、グローバルな債券市場のアンカー役を担ってきたということもできます。ここがついに動き出すとなると、グローバルな資本市場・為替市場に対する影響、長期資産運用に与える影響は大きなものになるでしょう。黒船来航のときに詠まれた「泰平の 眠りを覚ます 上喜撰 たった四杯で夜も眠れず」という狂歌が思い起こされます。おりしも、執拗なインフレ圧力が解消しない中で、日本のバブル崩壊以来35年間にわたって続いてきた円金利のトレンドが底を打つという、市場参加者にとっては未体験ゾーンに向かっているのが今の状況です。
 GCIエンダウメントファンドの骨子は、リスク管理を最優先した「長期分散」投資をシステマティックに継続することです。インフレ的な環境でグローバル経済の成長から果実を期待できる株式と、市場のボラティリティを収益源のひとつとして債券に代替し得るヘッジファンドをポートフォリオの中核として、円ベースでのリスク管理を最優先し、安定的な成果を受益者のみなさまとともに目指してまいります。