<2024年8⽉を振り返って>⼭内英貴
7月末以降、金融市場のボラティリティが上昇しています。米国ではいくつかの弱い経済指標を受けて景気減速懸念が広がり、9月以降、FRBが比較的早いスピードで金融緩和を進めていくことが織り込まれています。米国株にとっては、実体経済の減速への警戒感というマイナス材料と、金融緩和というプラス材料が交錯している中、8月に高値圏を回復後、9月に入ると一転して下落し、変動幅が拡大しています。
一方、7月末に利上げに転じた日銀は市場に配慮する慎重な姿勢を示していますが、為替市場では円安基調がついに転換した可能性が高そうです。2011年の民主党政権下で75円台で底値をつけた後、アベノミクスにより歴史的な円安相場が続いてきましたが、その根拠のひとつであるドル円金利差が縮小に転じ始めたこと、特にバブル崩壊以降30年間以上の日銀による金融緩和政策が転換したことは長期的な市場環境の変化として効いてくるのではないでしょうか。
年末にかけて、日本では自民党総裁選挙、米国では大統領選挙という大きな材料が控えていることもあり、市場のボラティリティが一層高まる可能性がありますが、長期的にみれば、株式市場は実体経済と企業業績、そして金利水準に収斂します。米国経済のハードランディングや日本経済の腰折れなどは現時点で数あるリスクシナリオのひとつにすぎないとみています。政治や金融政策、為替動向などを受けた短期的市場変動に対しては、翻弄されないスタンスが肝要だと思います。
8月は市場の反転が急激だったことから、トレンドフォロー型のヘッジファンド戦略(システマティック・マクロ戦略)が大きなドローダウンとなった一方、複数モデルを組み込んだ性格の異なるもうひとつのヘッジファンド戦略(ディバーシファイドアルファ戦略)はリターンを確保しました。また、急速な円高に対してはヘッジが功を奏しました。短期的なトレンド転換に対して、トレンドフォロー戦略は苦戦する傾向がありますが、長期的には伝統資産との相関を抑えた形でポートフォリオに分散効果をもたらすことが期待されます。
9月には毎年一回の基本資産配分の見直しを予定しています。引き続き、円ベースの期待リスク水準(成長型:年率8%、安定型:年率5%)を一定に保つ戦略ポートフォリオの原則を堅持し、さらにオルタナティブ投資を活用した分散の高度化により、リスク・リターンの最大化を目指してまいります。短期・中期の変動に振らされずに、変化し続ける環境にも右往左往することなく、グローバル経済の成長という果実を長期的に蓄えていく運用を徹底してまいります。